2014年10月22日水曜日

minus(-)「D」発売前夜 これまでの藤井麻輝と森岡賢の共同作業をふり返る。

今年5月に唐突に発表された藤井麻輝と森岡賢がユニットminus(-)を結成。
「犬猿の仲と呼ばれた二人が!!??」という驚きと同じ位、二人の音が交わるという衝撃と予想出来なさがありました。踊れてポップな森岡とノイズ・インダストリアルでハードな藤井、二人の楽曲の好対照というソフトバレエの魅力…解散直後に発表された二枚組ベストも作曲家別の二枚組でした。

minus(-)はこれまで数回のライブを行ったのみ、残念ながら私はいずれも観られておらず二人の出す音はライブダイジェストとアルバムのティザーの数分でしか聴けておりません。ミニアルバム発売を明日に控えた今日、期待と不安で落ち着かないのでこれまでの数少ない(?)二人の共同作業をふり返ることにします。


・初の共作曲「HYSTERIA」

作曲「Ken Morioka & Maki Fujii」と初めてクレジットされたのはソフトバレエの4thアルバム「MILLION MIRRORS」に収録されている「HYSTERIA」。気怠い電子音と遠藤のボーカルが遅めのBPMで響き続ける奇妙な楽曲です。この「MILLION MIRRORS」というアルバムに関して二人は、

藤井「ふたりで行ききるところまで行ききっちゃった結果のアルバムかもしれない。」
森岡「売れたいとかウケたいとかじゃなくて、僕がこう見えて感じたからこうなんだ、っていうことの方が大事じゃないかと思った。その結果です」

と発言しています。そしてminus(-)のミニアルバムは本作を作った時の感覚に近いとの森岡の発言も(藤井の「比べること自体ナンセンス」という発言もあり)。


「HYSTERIA」は2002年の再結成初ワンマンライブでもセットリストに組み込まれています。






・完全個別作業?5thアルバム「INCUBATE」の制作

「MILLION MIRRORS」に続く5thアルバム「INCUBATE」の制作は藤井曲森岡曲でエンジニアも分け、完全に個別での作業だったそうです。確かに「PARADE」や「WHITE SHAMAN」等ポップでゴージャスな森岡曲と「DEEP-SETS」や「GENE SETS」等ディープな藤井曲…二人の曲の振れ幅が一番大きなアルバムであるような気がします。しかし森岡とタッグを組んだエンジニア寺田仁氏は当時のインタビューでこんなエピソードを語っています。

寺田「こんなこともあったね。森岡クンがある曲のアレンジに煮つまった時、その曲の演奏データと音色データが入ったフロッピーを持って藤井クンが家に帰ったの。で、ソレを自宅で彼なりに組み直して、後日スタジオにやってきた、それを森岡クンがチェックして『アッ、このアイデア、いただき』って。(笑)」


・3人全員の共同作業と合宿、ラストアルバム「FORM」

6thアルバム「FORM」発売直前にNHK「POP JAM」にて収録曲「PHOENIX」を演奏したソフトバレエ。その時のクレジット「作詞・作曲:SOFT BALLET」を見た時の驚き(と何故か不安)は今でも覚えています。「PHOENIX」のクレジットは正確には「作詞:遠藤遼一 作曲:森岡賢、藤井麻輝 編曲:藤井麻輝、森岡賢」ですが、本アルバムは曲、詞共にこのような共作曲が多くを占め、「SOUND TREATMENT:MAKI FUJII」とクレジットされており、全体の音を最終的に藤井がまとめるという制作の仕方だったようです。合宿もしたそう。

藤井「これはいいアルバムです。ソフトバレエがものすごく変革した作品でもある。ぼくが初めて全体を完全にまとめたアルバムでもあるので、とても思い入れと手応えがあったんです。そうか、ソフトバレエってこれからこの方向でいけばいいんだって確信ができた…、んですけど…、ま、ご承知の通り(笑)。


・ライブリアレンジ

ライブ毎大幅に既存曲のアレンジが変わるのもソフトバレエの魅力。藤井が監修した11枚組ボックスセット「INDEX SOFT BALLET 89/95」(2009年10月リリース)に「test arrangement for live」等のクレジットでライブ用トラックが収録されているので基本は藤井メインでのアレンジだったのでしょうか…森岡曲のリアレンジで個人的に一番好きなのはINDEXにもトラックが収録されている「WITH YOU」。1stアルバムに収録された森岡らしいダンサブルなシンセポップですが各音色とフレーズが洗練され、ライブ現場ではサポートの友田真吾氏の手数の多いドラムも加わり大爆発といった印象です。何よりINCUBATEツアーの一曲目に演奏されたのが驚きでした。






・2002年 再始動「SYMBIONT」~2003年 閉経「MENOPAUSE」

再始動期各曲のクレジットは全て「作詞・作曲:SOFT BALLET」となっています。が、インタビュー等での発言や曲の質感から想像するに、詞は遠藤、そして藤井森岡それぞれで曲を仕上げるという形だったのではないかと。「SYMBIONT」に於いては藤井が作ったトラックに森岡がメロディを乗せた曲もあったという発言を記憶しています(確か「BABEL」)。


「MENOPAUSE」の制作についてはメンバーの発言や日記の記憶を引用したいと思います。

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>「皺が寄ってきますからね。後始末というか。最初から共同メニューにして、森岡がメロディ作ったら、あとは僕がすべてやるねって、最初からそう言ってればこっちも心構えができるんですけど、今回あいつは〈自分のはひとりでやりたい〉って言ってたんですよ。それが結局できないから、ケツ拭きを(怒)。


>「犬よ!結果こそが全てだ!4曲じゃねえか!?そもそもは6曲予定だろうが!?しかも出来たって言っても脱糞状態。 最後だから拭いてやる」


>森岡「キーーーー!(←本当にそう言ってます)、もう、だからムカつくんです!ちょっと聞いてくださいよぉ。僕、今回のライヴのトラック作るのにタッチしてないんですよ。スタジオに入れてくれないんです、この人は!」

藤井「入る直前にメールがきて。ああヤバい、と思ったんですよ。」


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再始動期の3つのツアーには全て参戦しましたが、特に2度目のツアー「満カイ」が最高に楽しかったです。このパフォーマンスはENDSで野生児化した遠藤を擁する第二期ソフバの極みかと…






・睡蓮「葉蔭行進曲」に森岡が「Additional Synth」で参加

ソフトバレエ閉経後は各自の活動を進めていた3人。藤井と女性ボーカル芍薬嬢のユニット睡蓮の2ndミニアルバム「ひたひた」(2008年6月リリース)に収録されている「葉蔭行進曲」に於いて、藤井は森岡を招聘します。当時のインタビューで「曲に何かが足りないと考えていたら森岡の顔が浮かんだ」と語っていた記憶があります(連絡したら「すぐやるよおおお!」と返事が来た。とも)





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その後藤井と森岡が一緒にいた場といえば、前述の11枚組ボックス「INDEX」内ブックレット用のインタビューを終えた森岡が、同ボックスのリマスター作業でスタジオにいる藤井を訪問した際の(微妙な距離感の)2ショットがブログに掲載されたくらいでしょうか…。


それ以降2人が交わることは無く、たまに「森岡が藤井(や遠藤)と連絡を取りたがっているが拒否されている」という情報が何となく流れ、睡蓮で4枚のミニアルバムを残し藤井失踪、森岡はマイペースに活動を続け数年の月日が流れた2014年にまさかの…という…


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藤井「森岡がないものを僕は持ってるけど、森岡が持ってるものは持ってるんだよな…たぶん(笑)」
2003年9月「音楽と人」インタビュー



藤井:31年も経つとそういう関係になるんじゃないですか。自分にないものを彼は持ってるし、彼にないものを僕は持ってるだろうし。夫婦みたいなものですね(笑)。ま、夫婦だったらDVが絶えない2人でしょうけど(笑)。
2014年10月「BARKS」インタビュー



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  参考文献:SOFTBALLETFORMBOOK、「INDEX SOFT BALLET 89/95」ブックレット、ピコエンタテインメントVol.2、音楽と人2002年11月号、2003年11月号、2004年2月号